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「炭素繊維を中国に不正輸出」は人ごとではない。外為法にどう対応するか。


 炭素繊維を中国に不正輸出
=芦屋の商社会長ら3人逮捕−兵庫県警
2015年5月26日(火)  
 兵庫県警外事課は26日、兵庫県芦屋市の化学商社「ポリケミカルズリミテッド」会長近藤正二(75)=兵庫県西宮市松ケ丘町=同社営業部長三宅憲夫(57)=神戸市須磨区高倉町=と、同社の取引先の輸出入仲介業者「シーズトレードサービス」種佐真(66)=大阪府泉佐野市南中安松=の3人を逮捕した。
 逮捕容疑は、2010年1月13日、経済産業相の許可を受けずに強度が高く、ミサイルなどの兵器製造に転用可能な炭素繊維約3500キロを韓国・釜山を経由して中国江蘇省張家港市に輸出した疑い。
 同課によると、炭素繊維不正輸出での逮捕は全国で初めて。近藤容疑者ら3人は「韓国に行くとは承知していたが、中国に行くとは知らなかった」と否認、ほか2人も否認しているという。
 近藤容疑者は当時は社長であり、11年に会長に就任。韓国光州市の会社に販売するとして輸出をしたが、県警が情報を得て、13年8月にポリケミカルズリミテット社を捜索したところ、韓国企業とのやりとりのメールから、韓国企業との販売実態がなかったことが判明した。さらに船の貨物関係書類から、問題の炭素繊維は中国の軍需関係企業と取引のある張家港市の商社に納品されていたことがわかった。中国の商社は香港や中東など世界各地の軍需産業に販売実績があるといわれている。同課は、炭素繊維が核開発懸念国に転売された可能性もあるとみている。 
 近藤容疑者らが韓国輸出に偽装して中国に輸出した背景なども調べている。ポリケミカルズリミテット社は1961年設立。年間売上は8億〜10億円。
 ポリケミカルズリミテット社に販売した取引先は、契約では「国内取引に限る」としていたが、県警に捜索されたことを知り、「炭素繊維は海外に出さない条件のはず。黙って輸出したのか」と問い合わせると、「自分が買ったものをどうしようと勝手」と言ったという。

■ 炭素繊維
1971年に東レが世界で初めて商業生産に成功。昨年、米ボーイング社の次世代大型旅客機の主翼などの主要部分に採用が決まるなど、国内メーカーは航空機や自動車分野などで世界を席巻している。

■ 外為法
外為法に該当する商品は、経済産業省に輸出許可を取らなければならない。
輸出許可を取らないで輸出した場合は、無許可輸出で外貨法違反の罪で逮捕、罰金の刑に処せられる。
外貨法の適用商品でなければ、輸出許可は不要。この場合は、税関に対して輸出許可証がないのは非該当であるからであると証明書を提出することで、輸出ができる。
非該当品であればホワイト国(米国、EU諸国、韓国など)には簡単に輸出が可能だが、非該当貨物であっても中国、台湾等はホワイト国ではないので、キャッチオール規制の規制を受ける。この制度を知っていたからこそ、直接中国に輸出せずに、ホワイト国である韓国を迂回させ、韓国が最終需要者のような偽装輸出をしたものと思われる。
米国には航空機の主翼に使用してもらうべく、盛んな営業活動をし、国内の自動車メーカーにも営業活動を盛んにしているし、この場合は何ら法規制がないので、なじみのある中国に売るということに対しての罪の意識は低くなっているのが実情ではないだろうか。しかし、中国はホワイト国ではないので、国内や米国に販売するのと同じように活動すると逮捕されることになる。
外貨法該当貨物を輸出する企業は、コンプライアンス・プログラム(CP)を定め、該非判定員を置かなければならないなど様々な規制がある。非該当貨物しか扱わない会社でも、輸出しているのであれば、該非判定員を置き、該非判定させなければならない。また、直接輸出していない会社でも、非該当証明を求められたということは、取引先が輸出することが明らかなので、輸出管理と同様の体制が求められる(みなし輸出事業者。輸出者等)。そのため、ポリ社に販売した会社が「国内取引に限る」と条件を出したり、「黙って輸出したのか」と詰め寄るのである。

当事務所が、非該当証明を求められた時に、セミナーを申し出るのはこのためである。
この会社は「韓国に売っただけで、中国に行ってるとは知らなかった」と言い訳(コンテナの韓国上陸記録がないので言い訳と判断)しているが、余罪も色々指摘されているので、意図的に中国に売っていた可能性が高いが、本当に迂回を知らずに、韓国に売ったと信じていた場合は、無罪で逮捕されないように(というより、はめられないように)自己防衛しなければならない。売っただけで終わりではなく、売った先の需要者および用途まで管理しなければならないと規定されているためである。

実際に非該当証明を出すのは簡単であるが、非該当証明よりも会社の組織体制、管理体制、該非チェック、取引先管理など総合的に手を打たなければ不正輸出に手を染めたということで逮捕される可能性がある。輸出者等遵守事項というものの存在を知らない会社も多い。「等」とついているのは、先の国内取引しかしていないが、国内取引相手が輸出している場合の みなし輸出事業者ということで、「等」とついているし、国内取引でも罰則があるということである。

輸出者等遵守事項を守るための体制づくり、正しい該非判定の作成要領、輸出後の管理体制などを総合的に作成するためには、品質管理者および出荷管理をする部門の両方が対応する必要がある。わからな場合は、ご相談ください。

国内取引しかせず、スポットで該非判定を求められた時には、該非判定もしくは非該当証明の作成依頼および提出で終わるかも知れないが、たびたび取引先から求められる場合や、御社が海外まで販路を広げるときには、ぜひ該非判定だけではなく、総合的に外為法および安全保障貿易制度を知って欲しいと思う。

ご相談は無料なので、メールでお問い合わせ頂ければ幸いです。
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